有機種子(オーガニック種子)にはどのような特性があるのか気になりますよね?
有機野菜の健全性は世界に認められている中、その根幹と言われる有機種子は各国政府が自国のレベルに合わせて独自に制定した有機農業の法律によって管理されています。
この記事を読むと有機種子とは何であるかを具体的に知ることができます。
さらに各国政府による有機種子の管理体制と普及率を理解することにより有機農業の生産システムをはっきりとイメージすることができるでしょう。
有機種子を理解することで有機農業(オーガニック)が菜園家と消費者にとって身近な存在であることを感じて頂けるはずです。
有機種子(オーガニック種子)について
[有機種子とは有機農業に関する法律によって定められている種子区分です]
結論を言うと有機種子(オーガニック種子)とは有機野菜(オーガニック野菜)を生産するための種子です。
日本であればJAS法における有機JAS制度によって有機種子を管理して不足を補うための経過措置を定めているように各国政府が独自の法律を制定して有機種子を保護しており、有機農業の生産性の向上に向けた取り組みをおこなっています。
有機種子とは法律によって認証されてる種子区分ということですね。
そのため有機種子を生産するための工程にはいくつかの規則があります。
それらの条件を満たした種子だけが有機農業で使用されることを認められているのですよ。
たとえば有機種子を生産するために使用できる種子のタイプ(区分)は『在来種』『固定種』『エアムール種』『交雑種F1』だけなのですよ。
私は有機JAS有機農産物生産行程管理の資格を持っており有機JAS認証農地や家庭菜園でオーガニック100%の有機野菜を生産しています。
有機種子として認証を受けるために証明すべき3つのこと
[有機種子は法律によって定められた種子区分です]
出典 Wikipedia-国会議事堂 衆議院議場
結論を言うと有機種子は有機農業(オーガニック)に関する法律に定められた栽培条件を満たすことで認証されます。
『有機種子』『有機野菜』『オーガニック』と表示するためには有機JAS制度の認証を受ける必要があるということですね。
その理由は公正な取引をするための世界共通の識別マークだからです。
それはあくまでも法律上のことであり高品質な有機野菜(オーガニック野菜)を生産するための条件ではありません。
たとえば日本の篤農家(とくのうか)と呼ばれる菜園家はオーガニック成分100%と同等性のある農産物を生産していますが有機JAS制度の認証を受けていない方もいるのです。
家庭菜園で有機野菜を生産する菜園家にとって有機種子を生産することは栽培の可能性を大きく広げることになるでしょう。
有機種子として認証を受けるために証明する必要がある3つのことを解説します。
有機JAS認証農地もしくは同等性のある土壌で有機的に生産した種子であること
[有機種子を栽培できるのは有機農業(オーガニック)農地だけです]
結論を言うと有機種子とは有機JAS認証農地で有機農業の栽培工程によって生産した農産物から採取した種子のことです。
有機JAS認証農地の条件は有害な化学物質が混入したり残留していない土壌であることです。
もしくは3年以上の期間、化学合成農薬および肥料を使用せず栽培をおこなっている農地も認証基準を満たしているのですよ。
そのような農地で自然由来の資材のみを使用して生産した農産物は有機野菜として認証されます。
そしてその有機野菜から採取した種子こそ有機種子なのです。
たとえ有機JAS制度で認証されていなくても有機農業の栽培工程によって生産された農産物ならばオーガニック野菜の品質と同等性があると言うことなのですよ。
これから農業経営を始める人や家庭菜園で有機野菜を生産する人はイギリスやドイツのような高品質なオーガニック野菜を生産することも難しいことではありません。
化学合成物質に汚染されていない健全な土壌は有機農業にとって最適な農地となるのです。
採取した種子に化学的な処理をおこなわないこと
[有機種子に化学的な処理をおこなうことは認められていません]
有機種子は採取した種子に化学的な処理はおこないません。
たとえば販売されている種子は発芽や生育を促進させることを目的として化学的な処理をおこなうことがありますが有機農業(オーガニック)では認められていません。
化学的な種子処理である種子消毒・種子加工・発芽促進処理を解説しますね。
化学合成農薬による種子消毒
[有機種子は化学的に合成した農薬を使用しません]
種子に化学合成農薬をまぶしたり、塗りつけたり、溶液に浸(ひた)すことで表面や内部の細菌やウイルスを駆除することを種子消毒と言います。
さらには農地に播種したときに種子に密着する土壌の消毒や殺菌も目的にしているのですよ。
カラフルな着色剤でコーティングしているフィルムコート加工も同時に行っている場合が多いので見分ける基準にしてくださいね。
使用されている薬品は立ち枯れ病やウイルス病を防除するためのものでありニンジンやジャガイモは種子消毒されていることが多いです。
アタリヤ農園や農業屋.comでは無消毒のニンジンの種子も販売していることもあるので100%オーガニック栽培をおこなっている菜園家の方は探してみてくださいね。
ジャガイモの場合は無消毒の種芋を使用するとウイルス病が発生する可能性もあるので優秀な種芋を使用しましょう。
アタリヤ農園公式サイト-アタリヤ農園のホームガーデン百科
種・野菜づくりの専門店 農業屋.com公式サイト-農業屋.com
無農薬栽培のジャガイモの固定種を販売する竹田かたつむり農園公式サイト-竹田かたつむり農園
化学合成物質による種子加工
化学的に合成した物質によって施(ほどこ)される種子加工は大きく分けて3つあります。
それは『フィルムコート種子』と『コート種子およびペレット種子』、そして『種子のシーダーテープ加工』です。
それぞれの種子加工が化学的な処理によるものなのか、もしくは自然由来の素材を使用しており有機農業で認められているものなのかは製造した種苗会社に問い合わせることで確認することができます。
実はオーガニックとして認証されている種子加工もあるのですよ。
あなたが有機農業経営であり加工を施された種子を使用する場合は種苗会社に資材証明書を発行してもらいオーガニック認証を証明する必要があるでしょう。
フィルムコート種子について
[ニンジンの種子は固定種も交雑種F1もフィルムコート加工を施されていることが多い]
フィルムコート種子とは化学的に合成した農薬でコーティングした種子のことです。
病原菌を駆除することを目的にしています。
コート種子もしくはペレット種子について
[コート種子・ペレット種子の素材については種苗会社に問い合わせると確認できる]
出典 月間 現代農業
コート種子もしくはペレット種子とはなんらかの物質によって生種(きだね:無加工の種子)を包むことによってサイズを大きくして表面の質感を滑(なめ)らかにしている種子のことです。
この加工の目的は種子を扱(あつか)いやすくすることであり白い粒のような形状が特徴的ですね。
コート種子もしくはペレット種子を播種機に充填(じゅうてん)してセルトレー(育苗用の容器)に播種(はしゅ)することで種播きを簡略化させているのですよ。
加工する素材が化学的に合成された物質であるなら有機種子としては認められません。
シーダーテープ加工について
[シーダーテープを使用することで種播きの時間を短縮することができます]
出典 タキイ種苗株式会社
シーダーテープ加工とは種子を一定間隔でテープに封入することで種播(たねま)き作業を簡略化させる目的があります。
シーダーテープ加工は自然由来の素材を使用している場合は有機農業での使用を認められていますよ。
化学物質による発芽促進処理
発芽促進処理の加工とは発芽を早めたり発芽時期を揃えることを目的にしています。
主な発芽促進処理
- 種子の吸水性を高める種皮(しゅひ)の研磨加工
- レーザー照射で種子に穴を開けて吸水性を高める加工
- 種子に水分を含ませる浸漬(しんせき)処理
- 種子の発芽を抑制(よくせい)する植物ホルモンを洗い流す洗浄処理
種子加工の方法いくつもありますが化学物質を使用した場合は有機農業では認められていません。
遺伝子組み換え種子でなないこと
[日本政府も遺伝子組み換え植物の未知なる影響についてガイダンスをおこなっています]
出典 農林水産省-生物多様性と遺伝子組換え(基礎情報)
有機農業は化学的処理を認めていないので遺伝子組み換え種子は使用することができません。
遺伝子組み換え技術の全容は解明されていないため日本政府も生態系への未知なる影響を考慮しています。
世界的な有機農業の指針であるコーデックス有機ガイドラインにおいて遺伝子操作(GEO)そして遺伝子組み換え生物(GMO)により生産されたすべての原材料および製品は有機農業の原則に適合しないため使用することは認められていないのです。
[コーデックス委員会は国際連合食糧農業機関FAOと世界保健機関WHOによる政府間組織です]
出典 コーデックス有機ガイドライン
あなたが生産した有機種子を証明して認証を受ける方法
[有機種子であることを証明するのは有機農業の法律です]
有機種子は有機農業に関する法律によって定められた種子区分です。
そのため有機種子であることを証明するのもまた法律であるということなのですよ。
有機種子を証明するのは資材証明書です。
そしてあなたが生産した有機種子が認証を受けるためにはトレーサビリティによってあなたが有機農業の生産システムによって栽培したことを証明するのですよ。
有機種子であることを確認するトレーサビリティ
[有機種子の認証を受けるにはトレーサビリティによる証明が必要です]
出典 農林水産省-食品トレーサビリティ「実践的なマニュアル」(農業編)
結論を言うと有機種子のトレーサビリティとは有機種子であることを確認する作業です。
簡単に言うと有機種子が有機農業の生産システムによって栽培されたという事実を日々の作業日報に基づく栽培記録によって明らかにするということであり、それこそがトレーサビリティなのですよ。
基本的には有機種子であれば種子の容器に「有機種子」または「オーガニック」と表示されていますが表示されていない場合は有機種子であることを確認する必要がありますよね。
その作業内容とは生産者が誰であるかを調べて栽培工程について問い合わせることです。
簡単に言うと生産者に有機種子であることを確認するということです。
有機農業で使用する製品も種子と同じようにトレーサビリティをする必要があります。
製造者に原材料や製造工程を問い合わせて有機農業で使用することが可能なのか明らかにするということです。
もし原材料に化学物質が含まれていたならたとえ有機JAS制度で認められていたとしても使用しないほうが良いでしょう。
なぜならわたしたち菜園家は生産性を向上させながらオーガニック100%の農産物を栽培することができるからです。
それに自然由来の資材を使用するほど費用をかけずに高品質な農産物を生産できるのです。
トレーサビリティ(traceability)とは追跡を意味するtrace(トゥレイス)と、やり遂げる・可能にするという意味であるability(アビリティ)という2つの単語を組み合わせて造った言葉であり追跡可能性とも呼ばれていますね。
第一次産業や製造業そして物流業でも使われている言葉ですよ。
2001年に農林水産省によって施行(しこう)されたトレーサビリティ制度と同じ作業だと言えるでしょうね。
そしてあなたが有機種子を生産したことを証明するのもトレーサビリティなのです。
あなたが生産した種子を有機農産物だと証明するのはあなたが日々の作業工程をノートに綴(つづ)った栽培日記でありそれがトレーサビリティなのですよ。
あなたが生産した有機野菜を証明するのもあなたの栽培日記なのです。
結論をいうと有機農業(オーガニック)とは生産の仕組みや工程のことであり農産物そのものには有機野菜を示すものはなにもないのです。
有機種子であることを証明する資材証明書
[資材証明書には原材料・製造工程・添加物、助剤・発行日の記載が必要です]
出典 登録認証機関 株式会社ACCIS-北海道有機認証センター
有機JAS認証事業者であれば必ず有機JAS制度における登録認証機関から有機種子であるという証明書の提示を求められます。
それは有機農産物を生産する者として有機農業(オーガニック)で認められている種子や資材を使用する責任があるからでしょう。
自給を目的として有機野菜を生産している菜園家であっても有機農業で認証されている種子や資材を使用したいですよね。
有機種子であることを証明するのが資材証明書であり、化学的処理をおこなっていないこと、そして遺伝子組み換え作物ではないことが記(しる)されていますよ。
たとえばそれが培養土(さまざまな資材によって調合した土)や土壌改良資材の資材証明書であれば製造工程も明記されています。
有機農業で認めれている資材であるという裏付けを取ってから使用しましょう。
その理由は有機農業で認められていない資材を使用すると有機性を失うことになりオーガニックではなくなってしまうからです。
資材証明書に化学合成物質を原料にしていると明記しているならばその種子や資材は使用しないほうが良いでしょう。
なぜなら自然由来であるほど有機農産物としての品質は高いからです。
それに化学合成物質を使用しなくても農産物の生産性を向上させることは可能であり、失った地球環境を取り戻す活動でもあるからです。
有機農業先進国のドイツやイギリスでは基本的に化学合成物質を使用してオーガニック農産物を栽培することはないのですよ。
各国政府における有機種子の現状
[有機種子の生産量によって国家のオーガニック(有機農業)普及率がわかります]
有機農業の法律は各国政府が自国のレベルに合わせて独自に制定しています。
有機農業の歴史が古い国ほど厳格な栽培工程を定めている傾向があり有機種子の管理体制もしっかりしていますね。
有機農業が発展している国には一つの共通点があるのですよ。
それは政府が普及活動を主導しているということです。
政府が長い期間をかけて有機農業の生産規模を拡大し普及活動に取り組んできた国は管理している有機種子のアイテム数も多いので生産者たちの可能性を広げます。
政府が有機農業の普及を主導しないと生産規模の拡大は難しく有機種子も生産されないでしょう。
現状として有機種子がない国は経過措置として農薬を使用して栽培した種子を使って有機農業をおこなうことになるため有機農業の特性である健全性を示すことが難しくなるのです。
欧州連合(EU)とアメリカそして日本の各政府による有機農業を支援してきた歴史とそれぞれの有機種子における管理体制について解説しますね。
欧州連合(EU)における有機農業の歴史と有機種子の現状
[ヨーロッパ諸国は健全な有機農業を世界中に広める役割を果たしています]
出典 欧州委員会-有機ロゴを使用する場合
有機農業の先駆者たちの多くはイギリスが出身地であり、有機農業システムの原型が誕生したのはドイツであることからもわかるようにヨーロッパは有機農業先進国によって構成されています。
欧州連合(EU)の有機農業規則において有機種子は有機農業の根幹であるとして大切に管理されています。
欧州連合に加盟する国々は有機種子を生産する事業者の情報を共有してます。
そして有機農産物の生産者はその情報に基づいて有機種子を購入しているのですよ。
アメリカにおける有機農業の歴史と有機種子の現状
[アメリカをオーガニック大国にしたのはレイチェル・カーソンが1962年に書いた一冊の本です]
出典 アメリカ農務省
アメリカ政府が農薬規制のための調査を開始したのが第35代大統領であるジョン・F・ケネディが在任中のときでした。
その理由はレイチェル・カーソンが1962年に『沈黙の春』を出版したからです。
そして環境保護を訴(うった)える大規模な国民運動が起こりました。
国民の主導によって有機農業の普及は加速してアメリカは有機農業(オーガニック)市場世界第一位となりましたね。
そのような有機農業の歴史を持つアメリカですが有機種子の管理体制は未(いま)だに整っていないというのが現状のようですね。
有機種子を生産する事業者の情報を網羅(もうら)していないため有機農業経営者や菜園家は求めている有機種子を入手できないこともあるのです。
そのような状況においては正当性が認められた場合に限り、有機種子以外の種子を使用することが法的に認められているのですよ。
(遺伝子組み換え種子はいかなる理由があっても有機農業では使用を認められておりません)
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日本における有機種子の現状
[日本は2022年5月2日から政府主導のもと有機農業(オーガニック)の普及を開始しました]
2022年5月2日『みどりの食料システム戦略』(環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律)が公布されたことにより日本政府は有機農業(オーガニック)の普及と生産規模の拡大を主導することを決定しました。
2050年までに有機農業の取り組み面積を100万ha(1a=100m×100m)に拡大する予定ですよ。
日本政府が有機農業を支援するという歴史はこれからはじまるのです。
日本は有機農業後進国であり有機野菜や日本野菜の有機種子はとても希少なのですよ。
それを証明するのが有機農業に取り組む農地の規模であり農地全体の0.5%(23500ha 2017年)しかありません。
このような状況の中、わたしたちが日本野菜の有機種子を入手する方法は自分で生産するしかないです。
それをおこなうための法律も策定されているのですよ。
日本の有機農業に関する法律(JAS法)では「有機種子が入手できない場合は持続的に効果を示(しめ)す化学的合成農薬および肥料が使用されていない種子を使用できる」としています。
日本の有機農業の現状では種子と播種による土壌への農薬の使用を認めているのです。
何故なら日本で販売されているほとんどの農薬は持続的に効果を示すことはないのでほとんどの農薬が使用可能であり化学的処理をおこなった種子を有機農業での使用を認めているからです。
ですがわたしたちが目指す有機農業はイギリスやドイツのような健全性の高い有機野菜を生産することです。
そして高品質な有機農業(オーガニック)であるほど自給率は高くなるで栽培費用を抑(おさ)えることができるのですよ。
こちらでは有機野菜を自分で生産する方法を解説しています。
[みどりの食料システム戦略は環境保護を目的として有機農業の普及に取り組みます]
出典 農林水産省
有機種子として認証を受けることが可能な種子区分
販売されている有機種子には4つの種子区分があります。
それは在来種・固定種・エアムール種・交配種F1なのですよ。
そしてほとんどの品種は西洋野菜です。
その理由は日本ではまだ有機種子の生産はあまりおこなわれていないからです。
日本の食文化で使用する野菜は日本野菜なのでたとえ有機種子の品種が豊富であっても西洋野菜の種子はあまり使用されないでしょう。
一般家庭で西洋野菜を使用することはあまりないですからね。
そのため日本において有機農業を普及させるには日本野菜の有機種子が必要なのです。
わたしたちが日本野菜の有機種子を自家採種によって生産するためにはそれに適合する種子区分の中から種子を選ぶことが重要になるのですよ。
有機種子を自家採種できる種子区分は在来種・固定種・エアムール種という3つのタイプの種子です。
自家採種が可能であり味も素晴らしいこれらの種子を使って栽培をおこなうことで自家採種の方法も自然と覚えていくでしょう。
こちらでは自家採種の方法を解説してます。
まとめ
有機種子が普及するほど有機農業の生産性は向上するでしょう。
そしてわたしたち菜園家が目指している持続可能な農業とはレディ・イブ・バルフォアやウォルター・ノースボーンが歩んだ道の先にあるようにも感じますよね。
レディ・イブ・バルフォアの軌跡についてでは有機農業の母と言われるレディ・イブ・バルフォアがオーガニックを世界に広めた歴史について解説しています。
どうぞご覧ください。
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