PVP登録品種でも野菜の自家採種はできる!改正種苗法を解説します

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PVP登録品種は種子のパッケージに表示されていますがどのような意味があるのかよくわからないですよね?

この記事ではPVP登録品種の意味を解説しています。

さらに深く関係している改正種苗法の目的についても簡単に理解することができますよ。

PVP登録品種は主に育成種(固定種)の知的財産権を法律によって保護している証明なので知識として情報を取り入れてあなたの農業生産活動をさらに有意義なものにしてくださいね。

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PVP登録品種についての解説

Home-Garden-PVP-Nourinsuisansyou[改正種苗法は家庭菜園による自給を目的とする自家増殖を制限していません]
出典 農林水産省

結論を言うとPVP登録品種とは法律(改正種苗法)によって知的財産権が保護されている認証品種です。

たとえば春さんが育種改良して開発した春トマトを農林水産省に申請してPVP登録品種になると春さんは春トマトの占有権(せんゆうけん:自分だけの物であることを保護する権利)を有することになります。

これにより春さんが長い年月と労力を費(つい)やして育種改良して開発した春トマトの育成者権(育成した者の権利)は法的な保護を受けるのです。

そしてBさんが春トマトの種子を購入して栽培するとしましょう。

Bさんが栽培した春トマトで自家採種をおこない種子や春トマトを自家増殖して営利目的や譲渡などの理由で利用するときはAさんの許可と許諾料が必要になるということです。

PVPとはPlant Variety Protection(プラントバラエティ プロテクション )の略称であり植物品種保護という意味です。

参考  農林水産省-品種登録制度[PDF]

改正種苗法の目的は品種の選択を制限することではありません

Nourinsuisansyou[PVP登録品種とは知的財産の保護を目的として農林水産省に登録された植物です]
出典 Wikipedia

改正種苗法は農林水産省に登録した品種を知的財産として保護する法律です。

その目的は新品種の開発を推進することです。

日本が開発した優秀な品種を菜園家や農業経営者たちに持続的に利用してもらうために施行されました。

たとえば日本で開発されたブドウの品種『シャインマスカット』の苗木が中国と韓国に流出して産地化されています。

さらにはイチゴ『章姫(あきひめ)』および『レッドパール』という2品種は育成者権者が韓国の種苗会社に許諾したことにより韓国で営利目的の自家増殖が無断でおこなわれています。

日本の優良品種が他国で産地化されることは開発者にとって大きな損失ですよね。

海外流出を防止し知的財産を守るために改正種苗法はあるのです。

参考 農林水産省-改正種苗法について[PDF]

種苗法の改正によって加えられた2つのルール

Souther-Lettuce[PVP農林水産省登録品種という表示はPVP登録品種の証明です]
出典 タキイ種苗株式会社

PVP登録品種に登録されている植物を保護する改正種苗法は2022年4月1日に完全施行されました。

種苗法が改正されたことにより2つのルールが新たに加えられたので解説しますね。

種苗法の改正による新しいルール1 PVP登録品種の海外持出制限

PVP登録品種を海外流出から法的に保護することができます。

そして輸出国や栽培地域を指定することも可能です。

改正前の種苗法ではPVP登録品種を譲(ゆず)り渡すことにおいては育成者権の効力は及(およ)びませんでした。

そのため正規に購入したPVP登録品種を海外へ持ち出すことは合法だったのです。

そのため日本で開発された優秀な農作物の種子が海外に流出して他国のブランドとして販売される事例も公表されています。

は、登録品種の育成者権の効力は、譲渡された種苗などの利用には及ばないとされていました。そのため、正規に入手した種苗を海外へ持ち出す行為は合法だったのです。

種苗法の改正による新しいルール2 営利や譲渡を目的にした自家増殖を認めない

PVP登録品種を営利もしくは譲(ゆず)り渡すことを目的にして自家採種や自家増殖することは認められません。

ただし家庭菜園のよいに自給(自家消費)を目的にしている場合においては対象外であり一切制限はないので種子の採種も自家増殖も可能です。

改正前の種苗法では正規に購入した種苗を利用して自家増殖することは禁止されていませんでした。

そのためPVP登録品種の増殖に制限はなく個体数の把握には限界があり海外流出を防止することが困難だったのです。

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種苗法の改正によりPVP登録品種の海外流出を防ぐための管理体制はより強固なものになりました。

PVP登録品種に関する費用(改正種苗法による)

Vegetable-Gardener2-PVP-Nourinsuisansyou[PVP登録商品を営利または譲渡を目的として自家増殖する場合は許諾が必要です]
出典 農林水産省

  1. 出願料
  2. 栽培試験の手数料
  3. 現地調査の手数料
  4. 年間PVP品種登録料
  5. PVP品種登録料に関する証明等の請求においての手数料
  6. 育成者権の移転等による登録免許税

[2022年(令和4年)4月1日に完全施行された改正種苗法による料金のみを表示しています]

1.出願料
単位料金
1品種14,000円
2.栽培試験の手数料
対象植物単位手数料
一般的な植物(下記以外の植物)1回93,000円
きのこ1回424,000円
木本性植物1回279,000円~
465,000円
特別調査形質の植物1回105,000円~
273,000円
  • 木本性植物は3年~5年という調査年数に応じて料金が加算されます。
    (1年間93,000円×調査年数)
  • 木本性植物とは茎が木質化して何年も生育を続ける植物のことです
  • 特別調査形質の植物は品目によって調査手数料が異なります。さらに通常の栽培試験に係る手数料として93,000円が加算されます。
3.現地調査の手数料
対象植物単位手数料
全ての植物1回45,000円
全ての植物2回90,000円

現地調査の回数は1回増えるごとに45,000円加算されます。

現地調査を実施するのは農林水産省の育苗管理センターです。

4.年間PVP品種登録料
PVP品種登録後の年度年間PVP品種登録料
1年目~9年目各年4,500円
10年目~30年目各年30,000円

PVP品種登録後の納付期限

納付期限までに登録料が納付されない場合は育成者権が取り消されます。

PVP品種登録後の年度納付期限
1年目PVP品種登録の日から30日以内
2年目以降各年の登録月日
5.PVP品種登録料に関する証明等の請求においての手数料
請求事項手数料
(各1品種)
PVP品種登録の出願中・登録後の証明1,500円
PVP品種登録簿の謄本(とうほん)・抄本(しょうほん)の交付350円
PVP品種登録簿の閲覧・謄写220円
願書と添付写真やその他資料の閲覧・謄写1,100円
6.育成者権の移転等による登録免許税
登録事項登録免許税[円]
(各1件)
育成者権の移転登録(育成権の変更手続き)9,000円
相続による育成者権の移転登録3,000円
専用利用権(PVP登録品種を第三者に利用させる権利)の設置登録9,000円
PVP登録品種の表示変更(名称・住所)1,000円
PVP登録品種の登録抹消1,000円
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PVP登録品種に登録されているのは種苗会社の育成種

Seed-Company-PVP-Nourinsuisansyou[改正種苗法は企業や個人のブランド野菜を含む植物の知的財産を守ります]
出典 農林水産省

PVP登録品種の育成者権とは著作権や特許権、商標権と同じように知的財産権のひとつであり農林水産省が審査および登録をおこなっています。

主にPVP登録品種に認証されているのは種苗会社が育種改良して開発した育成種でしょうね。

『育成種』は固定種であるため特性や形状といった野菜の形質は子孫に引き継がれます。

そのため育成種を自家採種することで同じ形質の種子や農産物をいくらでも増殖させることが可能なのですよ。

種苗会社は自社で開発した育成種の価値を保持するためにPVP登録品種にしています。

そのためPVP登録品種は種苗会社にとって優秀なブランド商品であることを証明しているのですよ。

各種苗会社のPVP登録品種を調べることで素晴らしい育成種を見つけることができるでしょう。

 

PVP登録品種の期限切れ品種は営利目的での自家増殖が可能です

Vegetable-Gardener-PVP-Nourinsuisansyou[PVP登録品種の権利器官が終了した一般品種は誰もが自由に使用することができます]
出典 農林水産省

PVP登録品種の育成者権には存続期間があります

対象植物育成者権の存続期間
一般的な植物(下記以外の植物)25年
果樹、林木、観賞樹等の本木性植物30年

木本性植物とは茎が木質化して何年も生育を続ける植物のことです。

改正種苗法において保護されるのはPVP登録品種であり一般品種の利用はついては一切制限されません。

一般品種とは『在来種』『PVP登録品種されたことがない品種』『PVP登録品種期間が切れた品種』です。

PVP登録品種が失効している品種は一般品種なので利用制限はなく営利や譲(ゆず)り渡すことを目的にして自家採種や自家増殖することができますよ。

種苗会社のPVP登録品種は優秀な品種が揃っており、権利が失効している品種は栽培して販売することも可能なので農業経営にとっては有利ですよね。

PVP登録品種は種子容器の表示で見分ける

PVP

[PVP登録品種とは品種開発による知的財産権を改正種苗法によって保護していることの証明です]

PVP登録品種は表示義務があるのでその記載内容を確認して見分けましょう。

PVP登録品種を証明する表示には3種類の記載パターンがあります。

パターン1 『登録品種』という記載

種子容器における[品種名+登録品種]という表示はPVP登録品種であることを証明しています。

表示例トレンドシティとまと(登録品種)
パターン2 『登録品種』+『品種登録番号』という記載

種子容器における[登録品種+品種登録番号]という表示はPVP登録品種であることを証明しています。

表示例トレンドシティとまと 品種登録番号:000000
パターン3『PVPマーク』PVPの記載

種子容器におけるPVPという表示はPVP登録品種であることを証明しています。

表示例トレンドシティとまと PVP

育成者権者がPVP登録品種に海外への持ち出しを制限したり国内においての栽培地域を限定するなどの利用条件を付けた場合はそれを証明する書面が種子のパッケージに記載されます。

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まとめ

PVP登録品種は改正種苗法によって保護される知的財産権(育成者権)です。

対象となっているのは主に種苗会社が開発した育成種(固定種)でありPVPや『登録品種』という表示によって識別できるので確認しましょう。

主にPVP登録品種に登録されているのは種苗会社が育種改良した育成種(固定種)です。

育種改良品種「育成種」(固定種)については固定種に分類される2種類を解説!伝統野菜の在来種と育種の育成種で解説しています。

ぜひご覧ください。

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